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『アニメNEXT100 』キックオフシンポジウム
~アニメのつくる未来~レポート

多くの先人たちの思いによって支えられてきた日本のアニメーション。それが2017年1月に誕生から満100年を迎えます。日本動画協会ではこの100年を機に、国産アニメーションの歴史を振り返り、また、次なる100年に向けて日本のアニメーション産業がより発展することを目指す「アニメNEXT100」プロジェクトをスタートしました。

12月6日には、東京・秋葉原UDXにてキックオフシンポジウムを開催。アニメーション業界で活躍するクリエイターのみならず、音楽、芸能、テクノロジー、著作権などにまつわる各界の識者をお招きし、「アニメのつくる未来」について、さまざまな面から議論を行いました。本記事では、当日の様子をレポートします。


日本動画協会理事長・石川和子による挨拶

日本動画協会理事長の石川和子による開会の挨拶に続き、経済産業省商務情報政策局メディア・コンテンツ課長の平井淳生氏と、文化庁文化部芸術文化課長の木村直樹氏から来賓の挨拶をいただきました。


経済産業省商務情報政策局 メディア・コンテンツ課長の平井淳生氏

「100年間で日本のアニメーションは技術的に大きく進歩し、お客様も世界に広がりました。しかし、変わらない部分もあるのではないかと思っております。それは作り手のみなさまの『お客様に本当に楽しんでもらいたい』というエンターテインメントへの思いであり、お客様の『素晴らしいアニメには心から喝采を送りたい』という作品に対する審美眼です。そういったものを大切にしながら、これからも産業として大きく発展していただきたいと思っております」(経産省・平井課長)


文化庁文化部芸術文化課長の木村直樹氏

「2020年から開催される東京オリンピックについても、スポーツだけでなく、文化の祭典でもあります。文化庁としては、今後も文化プログラムに力を入れて取り組んで参りますとともに、2020年には全国各地でさまざまな文化芸術活動を展開していきたいと考えております。このシンポジウムを皮切りに、日本のアニメーションがいっそうの盛り上がりを遂げることを期待しておりますし、文化庁としても、できる限りの支援を進めていきたいと考えております」(文化庁・木村課長)

■100周年プロジェクト『日本のアニメ大全』

シンポジウムはまず、「国産アニメーションの情報データベース」の構築を目指すプロジェクト、『日本のアニメ大全』に関する説明から始まりました。

司会を務めたのは、同プロジェクトリーダーの吉田力雄(日本動画協会副理事長)。登壇者は次の4名です。

・とちぎあきら氏(東京国立近代美術館フィルムセンター 主任研究員)
・大徳哲雄氏(株式会社樹想社 代表取締役・立教大学文学部 文芸思想専修講師)
・木村智哉氏(明治学院大学 非常勤講師)
・檜山大悟(株式会社アーイメージ 取締役・日本動画協会データベース・アーカイブ委員)

日本のアニメーション作品は2016年9月末の段階で、「シリーズ作品を含むタイトル数が1万1723作品、サブタイトル数が15万8442話」という膨大な数が確認されています。『日本のアニメ大全』では、これらの作品に関する情報を商業・アート系を問わずに詳しく網羅。ウェブ上のデータベースとすることで、発表年月や制作スタッフの名前などについて、各制作会社の協力によって得た正しい情報を手軽に検索できるようになります。


プロジェクトリーダーの吉田力雄

さらに、版権窓口への連絡先も記載することも特徴のひとつ。そうすることで、国内外から寄せられる、日本のアニメーション作品のビジネスへの利活用を円滑にしていくことも期待されます。

「国産アニメーションに関する情報をデータベースとして収集することで、ビジネスユーザー、クリエイター、研究者、アニメファンなど、さまざまな人が今の作品だけでなく、昔の作品の情報にも簡単にアクセスできるようになる。そうすることで、『この作品は知らなかったけど面白そうだ』といったような、ロングテール化も考えられるのではないかと思っております」(データベース・アーカイブ委員の檜山)


写真右・檜山大悟(日本動画協会データベース・アーカイブ委員)による解説

日本のアニメーション作品は膨大な数があるため、「名前は知られているけど、詳細がよくわからない作品」も少なくありません。『日本のアニメ大全』では、そうした作品についても調査を行い、できる限り具体的な情報を明らかにしていくとのこと。

中でも力を入れて調査しているのが、「日本アニメーションの幕開け」となった国産商業アニメーションの第1号となった作品について。実は劇場公開第1作は、1917年の作品であるとは言われてきた1作目は、1917年の前半に劇場で公開されたことはわかっているものの、どの作品で、どんな内容だったのか、まだ調査と議論が続いているのが現状なのです。


左から調査チームの木村智哉氏、大徳哲雄氏、プロジェクトリーダーの吉田

調査チームメンバーである前出の大徳哲雄氏によると、「現存しているもっとも古い日本の商業アニメーション作品は幸内純一の『なまくら刀』で、1917年6月に公開されたことがわかっている。しかし、実際には『なまくら刀』の前に何作品か商業アニメとして公開されていた」そうです。

では、それがどんな作品で、誰が作ったものなのか?

これまでの研究に加えて、調査チームが古い映画雑誌の記事などを探ったところでは、漫画家の下川凹天が手掛けた『凸坊新畫帖 芋助猪狩の巻』という作品が、1917年1月中に上映されたとの記録が見つかりました。ただし、下川は同時期に複数の作品を作っていた可能性もあり、この記録も「我邦で最初の試みとして成功せるものか」との記述に留まっています。

「つまり、作品名としては確定していないが、少なくとも、日本の商業アニメーション第1号は、下川凹天という作家による作品のどれかで1917年の1月頃に封切られた、というところまでは、確定していいだろうと考えています」(大徳氏)

『日本のアニメ大全』プロジェクトでは、引き続き新しい資料を求めて調査を進めていくとのこと。

このほかにも同プロジェクトでは、東京国立近代美術館フィルムセンターと協力して日本のアニメ創世記の映像発掘や復元を行っていくことのほか、アニメ業界の先人たちによるメッセージを収録した映像集「オーラル・ヒストリー」も制作していくことを発表。会場では、トムス・エンタテインメントが50周年記念に制作した、『ルパン三世 カリオストロの城』などの作画監督として知られる、大塚康生氏のアニメーター人生を自身と関係者の証言で綴った『飄々』のダイジェスト映像も公開されました。


『飄々』

次いで東京国立近代美術館フィルムセンターとちぎあきら氏による「戦前のアニメーション文化史」と題し、フィルムセンターで所蔵する戦前の貴重なフィルムの上映及びナビゲートが行われました。


とちぎあきら氏

戦前から日本のアニメーションが高水準にあったことをうかがわせる、クオリティの高いフィルムの数々に、会場からは驚きの声も挙がっていました。

「日本のアニメーションは先人たちの日々の努力と熱き思いによって今につながっている。その歴史と文化をまとめた『日本のアニメ大全』を記念誌として世界に発信することで、次の100年につなげていきたい。それが長年アニメ業界に携わってきた我々の使命だと思っています」(プロジェクトリーダー・吉田力雄)

■パネル第1部『アニメーション教育・人材育成・発掘』

続くパネルディスカッション第1部では、「アニメーション教育・人材育成・発掘」のプロジェクトについて、日本動画協会理事で同プロジェクトリーダーの植田益朗がファシリテーターとなり、日本のアニメーション業界の課題について議論しました。

パネリストは現役のクリエイター、プロデューサーである次の4名です。

・清水慎治氏(東映アニメーション株式会社 常務取締役・プロデューサー)
・大地丙太郎氏(アニメ監督・演出家・撮影監督)
・高橋良輔氏(アニメ監督・脚本家・演出家・プロデューサー)
・山村浩二氏(東京藝術大学大学院映像研究科教授・アニメーション作家)


写真右から、大地丙太郎氏、清水慎治氏、高橋良輔氏、山村浩二氏、ファシリテーターの植田益朗

まず議論となったのは、制作現場で実際に起こっている課題について。各パネリストが自身の経験を踏まえ、こう語りました。


大地丙太郎氏

「2001年に『アニメーション制作進行くろみちゃん』というOVAアニメを作りました。アニメの制作現場を題材にした作品で、スケジュールや予算がきついとか、プロデューサーが突然倒れてしまって仕事を丸投げされるとか、実際にあっためちゃくちゃな問題を、それでもアニメは楽しい仕事だと前向きに笑い飛ばしたものです。

しかし最近、この作品で描いたような問題が笑えなくなってきている。それはやっぱり、業界に優秀なプロデューサーが足りていないからではないかと思います。人材育成を考えるとき、アニメーターだけでなく、プロデューサーの育成も考えていく必要があるのではないでしょうか」(大地氏)


清水慎治氏

「もうアニメーション業界は崩壊しているんじゃないかと思うときがあります。僕らが現場にいた頃は、スタジオのどこかでいつも誰かと誰かがケンカしていました。激しく意見をぶつけ合うくらいの熱が作品づくりにあったんです。だから仕事はきつかったけど、楽しいしやりがいもあった。でも最近のスタジオの風景は違います。

東映アニメーションでは監督と演出助手と進行の3人が机を並べて作業をしているのですが、見ると互いにメモで指示を出し合っている。全然会話をしないんです。制作現場がセルからデジタルへと移行していく中で、コミュニケーションまでメールのやり取りみたいになってしまった。決してそれが悪いとは言いませんが、アニメを作る仕事を楽しんでいるのだろうかと思うときがあります。

実際、入社して半年くらいで辞めてしまう人が1人2人じゃないんです。せっかく試験を通って入社したのにもったいないと思うんですが、やっぱり、現場からものづくりの楽しさみたいなものが失われてしまっているのかなと感じます」(清水氏)


高橋良輔氏

「私は1964年に手塚治虫先生の虫プロダクションに入って、それからずっと業界がゆるやかに上昇していた頃に現場にいましたから、いいときを過ごしてきたという実感があります。思い返すと、当時のプロデューサーは僕と僕の周りにいた班のことを、予算、スケジュールだけでなく、各スタッフの気質まで把握していました。

しかし最近のプロデューサーは全体の中で自分が今、何をやっているのか把握することすら難しくなっているのではないかと思います。それは制作のサイクルが短くなりすぎて、スケジュールがきつすぎるということが原因かもしれません」(高橋氏)

一方、主にアート系アニメーションの個人制作を中心に活動してきた山村浩二氏は、別の視点からアニメーション業界の人材育成について言及します。


山村浩二氏

「先ほど、高橋良輔さんが虫プロに入られた年が、私が生まれた年と同じだと知って驚いています(笑)。私は産業としてのアニメーションではなく、表現としてのアニメーションを追求してきました。日本のアニメーション業界はテレビの方ばかりを向いていますが、もっとアニメーションには幅広い可能性があり、いろんな形で技術者の才能が活かされるべきだと思っています。そのための人材育成の場として、2008年から東京芸術大学映像研究科のアニメーション専攻の教員をしています。こちらも模索状態ではあるのですが、ひとつのあり方として、芸大での取り組みを紹介していきます。

例えばプロデューサー育成では、企画開発という名目で2009年から2012年にかけて年5回の講座を行いました。国際共同制作をしている方や、3Dの技術開発をしている方など、さまざまな分野のプロデューサーをお呼びしてケーススタディをする内容です。

また、私自身がアニメーション教育を専門的に受けたわけではなく、世界中のいろんなフィルムを見て、独学でアニメーションを作ってきた人間です。しかし今の若い人たちは、狭い分野でのアニメーションは知っていても、これまで世界で作られてきた多様なアニメーションについてあまり知らない。そこで横浜市と芸大の共催で2009年から、市民講座として世界中のアニメーション作家を呼び、彼らのフィルモグラフィーに触れられる機会を年3回にわたって提供しています。

さらに、文化庁との産学共同プロジェクトとして、『アニメーションブートキャンプ』も2012年から行っています。アニメ制作を学ぶ学生を対象に、現役のアニメーターが指導を行う短期集中型のスキルアップ講座です。しかし学生のスキル向上だけが目的ではありません。これはアニメーション教育の方法を探る試みでもあります。既存の産業の枠組みの中で受け身になって発想するのではなく、自分が作りたいものを作るための環境を自ら開拓していけるような、新しい人材の育成方法を探っています」

商業アニメだけでなく、もっと多様なアニメーション文化を育て、それを支える人材も輩出していきたいと語る山村氏。これを受けて、「未来のアニメ業界に望むべき人材像」について、前出の清水氏からはこんな意見も。

「今年は『君の名は。』が大ヒットしました。新海誠さんは山村さんと同じように、ずっと1人で作品を作ってきた人。制作環境がアナログからデジタルに移行したことで、これから第二、第三の新海誠が出てきてもおかしくないと思います。しかし、それは日本からとは限らない。

中国でも中近東でもヨーロッパでも、現地に行くと日本のアニメが好きな若い人たちの目がキラキラしていることに圧倒されます。その中から、新海さんや山村さんのように1人でもアニメを作り始め、しかもそれが高い評価を得てしまうような人が現れても不思議じゃないんです。

これからの日本のアニメーション業界は、世界中のアニメ好きがライバルです。本気でアニメが好きで、彼らに負けないだけのものを作ってやろうという人がいなければ、“世界に冠たる日本のアニメ文化”なんて言っていられなくなります」

大阪芸術大学で教鞭を執り、アニメーション業界に多数の生徒を送り出してきた高橋良輔氏は、「業界のベースとなるアニメーターの待遇改善をしなければ、『君の名は。』のようなトップの作品もやがて生まれなくなってしまう」と警鐘を鳴らします。

「クリエイターが育つためには、企業であれ国であれ、何らかの後押しが必要です。私も新人の頃、給料が3万円(1960年代)だったときに、手塚先生が自分の作品を作るために役立てなさいと15万円をポンとくれたことがありました。

クリエイターは勝手に育つから、支援なんて必要ないと思っていたこともありましたが、それは傲慢な考えなんです。自分はどうだったかと振り返ってみると、やっぱり自分は手塚先生の虫プロに育てられた。だから若いアニメーターの支援というのを、業界全体で考えていかなければならないと思うんです」


ファシリテーターの植田益朗

こうした提言について、ファシリテーターの植田益朗は、「待遇改善は難しいテーマではありますが、そこは避けて通れないし、業界を挙げて取り組んでいかなければならないと思っています。そのためにも30代、40代の実際に現場を引っ張っている世代の方々に、同じテーマでぜひ、また議論してほしい」と答え、パネルディスカッション第1部をしめくくりました。

■第2部:『アニメの未来~アニメの可能性~』

パネルディスカッション第2部は、これまでと打って変わって業界外のパネリストが中心となり、日本のアニメーションの未来と可能性について意見を交わしました。ファシリテーターは株式会社サンライズ代表取締役社長で、「アニメNEXT100」統括プロデューサーの宮河恭夫が務め、次の6名が登壇しました。

・齋藤精一氏(株式会社ライゾマティクス 代表)
・SUGIZO氏(LUNA SEA・X JAPAN・JUNO REACTOR)
・高野明彦氏(国立情報学研究所教授)
・中川悠介氏(アソビシステム株式会社 代表取締役)
・浜野京氏(内閣府 政策参与[クールジャパン戦略担当])
・福井健策氏(骨董通り法律事務所 弁護士)

それぞれ分野が異なるプロフェッショナルたちが一同に会した2時間にわたる議論は刺激的な内容で、扱ったテーマも多岐にわたりました。本当ならばそのすべてを掲載したいところですが、あまりに分量が多くなりすぎるので、ここでは3つのテーマに分けて、印象的だった各パネリストの発言を抜粋して紹介します。

【海外進出について】

「25年前に僕らがLUNA SEAでこの手の音楽を始めたときは、もちろんビジュアル系という言葉はなかったし、音楽もアメリカのもの、イギリスのものというようにはっきり分かれていました。それがとっても僕らは窮屈に感じて、良いものはジャンルや国の垣根を飛び越えて取り入れ、ぐちゃぐちゃに混ぜて新しい音楽を作っていきました。

海外でも活動するようになった今、当時を振り返ってみると、僕らがやっていたことは、実はとっても日本的だったと思います。好きなものは何でも取り入れて自分たち流にしてしまう。これはアニメーションもそうだったように思います。日本のポップカルチャーとして世界に切り込んでいくあり方は、音楽もアニメーションも、恐縮ながらとても共通するものがあると思っています。

海外進出でいえば、『日本のロック』だからとお客さんが入ってくれる時代は終わったと思っていて、どこの国のものであれ、本当に中身で評価される時代になったと実感しています。魂をかけて、全霊を込めて作ったものが、嘘偽りない芸術やエンターテインメントとして評価される。だから作り手としては、ただただ切磋琢磨していくだけです」(SUGIZO氏)

「もはや『日本』ということを打ち出すだけで、日本のコンテンツが海外に売れる時代ではなくなっています。それぞれの地域の方のライフスタイルや嗜好に合わせてローカライズしなければ、爆発的にヒットすることは難しい。そのため海外に出ていくなら、純血主義ではなく、海外の人と積極的にコラボレーションすることが重要になっていきています」(浜野氏)


高野明彦氏

「日本のアニメーションが世界で人気な理由のひとつが、キャラクターの無国籍性にあります。パックマンにしてもマリオにしても、どこの国のものか気にしないで楽しめる。村上春樹の小説が『世界文学』と呼ばれていますが、それにならえば、日本のアニメーションは『世界物語』。世界に通用するストーリーテリングみたいなものではないかと。

もちろん、そうでない部分はローカライズする必要があって、例えば『巨人の星』はインドではクリケット選手になる。それでも日本のアニメーションが求められるのは、細部は異なるけど、作品に流れている感情には、全世界共通の部分が実はあるということですよね。随分と日本的な感動だと思っていたものが、実は普遍的なものにつながっているということを、僕たちはアニメを通じて発見できるのかもしれません」(高野氏)

「日本のアニメというのは未来のイメージを扱ってきたものが主流ですが、僕はそれが段々と現実になり始めているように感じます。サンライズさんと一緒に実物大のガンダムを動かすアイデアを公募するプロジェクトをやっていて、そこに応募される研究者の方々は、子供の頃にガンダムを見てロボット工学を志したという人が多いんです。想像が現実になるという意味で、大きなループの始点と終点が結ばれるところに立ち会っているのではないかと思います。

しかし、それだけイマジネーションを刺激するものなのに、日本のアニメーションは国内外で抱かれているイメージにズレがある。海外から見ると、伝統的な年輪のある文化として捉えられています。

しかし国内ではちょっと違っていて、比較的に若いサブカルチャーだと思われていたり、細かく分野で分かれてしまっていたりする。海外から見られている価値について、当の日本人が100%理解していないところが、アニメーションがもっと外に積極的に出て、発展していく可能性を少し下げてしまっているのかなと感じます」(齋藤氏)


写真左が中川悠介氏

「今って日本で売れてから世界に行こうじゃなくて、日本で売れると同時に世界に行かないとダメだと思っています。きゃりーぱみゅぱみゅも紅白に初めて出た年明けの2月にワールドツアーでしたね。もちろん海外へのあこがれはあるんですけど、日本はSUGIZOさんが仰ったように、いろんな文化をキュレーションして独特のものに作り変える力がすごくある。そこでひとつのキーになるのがアニメだと思うんです。

僕は海外に行ったらライブに来た現地の子と話すようにしているんですが、アニメを通して日本を好きになったとか、きゃりーを通して日本を好きになったとか、ラーメンを通して日本を好きになったとか、いろんな入り口から日本に触れているんですね。

これから海外に日本のコンテンツが出ていくためには、もっといろんな入り口を、アニメも含めて作っていくことが必要なんじゃないでしょうか。日本の中にいたらひとつの業界で食べていくことはできるけど、海外に向けては、アニメも音楽もいろんな業界と絡んで出ていくことが重要になると思います」(中川氏)

【著作権について】


福井健策氏、浜野京氏

「海外に日本のコンテンツが出て行くときに、必要以上に力が入ってしまうケースは多々あります。例えばハリウッドで日本の漫画やアニメ作品を映像化したいなんて依頼は非常に多く、当然、聞かされる契約金はとても高いわけです。これはかなり売れている漫画家さんクラスでも浮足立って地に足がつかなくなってしまうほどです。その時点で映画化が決まったかのように喜ぶわけです。

でもそこから契約交渉が始まり、しかも相当に一方的な内容が伝えられます。ハリウッドなら基本的に映像化権+ααが全世界で永久に独占される内容だと考えたほうがいい。著作権を譲渡するのと実質的には変わらないほどです。さらに勝手に物語やキャラクターを変えられてしまう可能性も高い。もっと言うと確かに最初の一時金は高いけど、計算式が非常に複雑で、よく読むとトータルで大した金額じゃなかったりする。そういった内容がすべて英語でドサッと届けられます。真面目に交渉しようとすると、何年もかかってしまい、費用もかさみます。

ところが本当に重要なのは、それだけ苦労して契約を交わしても、決まっているのは映像化の権利を与えたというだけのことであって、本当にハリウッドで映画になるかどうかはわからないということです。ほとんどは企画書の段階で頓挫して、珍しく公開されたとしても、関係者一同が二度と思い出したくない映画になっている可能性もある。

何が言いたいかというと、外に向けて挑戦することはどんどんすべきです。ただ、相手をよく見てちゃんと武装して、そして多様な選択肢をもって向き合うことを忘れてはなりません。契約に関する知識を身に着けて、交渉の専門家も育成していく。それが日本のアニメーションの独自性を失わずに、外へと勝負できる環境を整えることにつながっていくと思います」(福井氏)

【映像以外のビジネスについて】

「私たちはガンダム30周年の際にお台場に立像を作りました。初めはガンダムの魅力をあらためて発信するきっかけづくりになればと考えていたのですが、蓋を開けたら50日間で400万人が来てくださった。このとき、アニメーションは初期にはお菓子屋さんやふりかけ屋さんに支えられ、次に玩具メーカーに支えられ、そして今、また新しいステップに進むときが来たのだなと感じました。

現在、アニメーション関連のライブやイベントは年間600本以上行われていると言われます。10年前だったら考えられないことです。アニメを活用した体験型ビジネスが新しい分野として花開いたのです。

海外もイベントと物販が変わってきました。例えばガンダムはシンガポールと香港で大きなイベントをやっています。ガンダムの6m立像を設置して、それを見ながらガンプラを買っていただき、ガンプラの大会も行う。実はガンプラは売上の4割が海外です。イベントと物販について言えば、もはや日本と同じぐらいの規模で海外のビジネスができるようになってきました。これをさらに広げていくことが次の100年につなげていくためにも重要だと考えています」(宮河)


ファシリテーターの宮河恭夫

「もっと日本人は私たちの優位性を認識していいんじゃないかと思います。例えばアニメは、欧米では子供が見るものという意識が強くて、作品も基本的に子供向けに作られる。でも日本は大変にテーマが深くて、大人が見るような作品もたくさんあるんですね。幅広い層の方が楽しめる文化になっているわけです。それはこれから世界を変えていくと思います。

なぜなら海外のビッグブランドは、若い層に訴求できるような文化とコラボレーションしたいと思うわけです。そういうコンテンツを私たちは持っているんです。すでにGUCCIが『ジョジョの奇妙な冒険』とコラボしたり、ルイ・ヴィトンが『ファイナルファンタジー』のキャラクターとコラボしたりしています。入り口だけでなく、うまく外に出していくための出口を見つけていくことがこれから重要になってきますし、戦略的にやっていけば、世界でも大人が見るアニメがヒットするということが起こってくると思います」(浜野氏)

「90年代の僕らのメインの収入はCDによる印税でした。それが今や目も当てられない状況になっています。しかしCDの売り上げが下がった分、様々な手段で音楽に触れ、気に入ったらライヴに足を運ぶという人が増えています。音楽の世界では今もっとも求められているのがライヴなんです。複製物で儲けるのではなく、それはあくまで本物に触れてもらうための呼び水に過ぎない。

最初に『本当に中身があるものであれば、必ずお客さんは評価してくれる』とお話しましたが、これは音楽だけでなく、映像の世界でも、ほかのコンテンツでも、すべてに共通すると思っています。結局、お客さんが手に取る媒体は時代によって変わってきました。しかし生のアーティストや表現者がステージに立って、観客がそこに何かしらの対価を支払って観るという形式は、おそらく2000年前からあるし、2000年後も絶対に残るでしょう。

世界中に情報があふれている今だからこそ、モノを作っている人間の中身や資質がすべてだと思います。それはアニメでもCGでも書籍でも変わらない。最終的に僕らは自分自身を磨き上げていくことが、ビジネスとしても、もっとも重要なのではないかと思います。

とはいえ、世界市場の中では日本が一番、未だにCDが売れています。僕らが思っている以上に世界は変わってきているので、いかに追いついていくかということを考えていかなければならないですね」(SUGIZO氏)


こうしたパネルディスカッションの議論を受けて、福井氏からアニメーションを取り巻く可能性を切り開くために必要なことを、4つのポイントからまとめていただきました。

(1)「開く」
世界にはコンテンツがあふれているので、さまざまなかたちで作品に触れてもらう機会を用意していく。著作権についても、権利を守るところはしっかり守りつつも、ある程度はオープンにしていくバランス感覚が求められるでしょう。

(2)「交わる」
ライブイベントに代表されるように、音楽や展覧会など、映像コンテンツに留まらない展開を、異業種との交流によって実現していく。「2.5次元コンテンツ」はその一例です。

(3)「支える」
国や業界団体からの支援だけでなく、『この世界の片隅に』の公開がクラウドファンディングによって実現したように、お客さんに応援してもらうといった視点も、作品づくりにおいては重要になっていきます。

(4)「つながる」
最後は、ディスカッション後の参加者からの質疑応答、意見交換の中で、ファシリテーターによりピックアップされたキーワード「つながる」でした。アニメーションを愛する人たちで国内外のネットワークを作っていく。そうすることでもっと業界を盛り上げていき、海外進出も円滑になっていくことが期待されます。

■シンポジウム総括・『アニメNEXT100 2017』宣言

そして、最後に再び石川和子理事長が登壇し、5時間半に及んだシンポジウム全体の総括を行いました。

「まずは『日本のアニメ大全』。歴史的な観点から世界に向けてオリジナリティと先駆性を発信したします。

『アニメーション教育・人材育成・発掘』については現在、人材育成委員会が取り組んでいる産業界における人材育成に加えまして、子供たちの未来を切り拓くためのアニメーション教育の取り組みも積極的に進めて参ります。

そして『アニメの未来』。さまざまな分野のコラボレーションなど、日本のアニメーションの可能性を追求して参ります。世界のアニメーションマーケットへ、アニメーションのパワーとインパクトを強くして発信して参ります。そして、新たな日本のアニメーションの素晴らしさをさらに発展させる、キッズアニメーションの基盤をあらためて構築し、世界へアピールして参ります。

これら3つの柱を軸に、長期的な視点を持って進めて参りたいと思っております。このシンポジウムを通して、アニメの可能性は限りないと、あらためて感じました。日本動画協会は100周年をきっかけとして、アニメの力を全世界にアピールして参ります。みなさまどうぞ、『アニメNEXT100』を応援してください」

シンポジウムの模様は、YouTubeでの映像配信が近日公開予定です。
以上、キックオフシンポジウムのレポートでした!

写真:(株)デザインオフィス・キャン 加藤武

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