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AnimeJapan2017「日本のアニメ大全」報告会レポート

昨年4月のキックオフシンポジウムから1年。100年の歴史を持つ日本のアニメーション作品の情報を収集し、データベース化するプロジェクト「日本のアニメ大全」の中間報告会が、3月26日に東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2017」内で行われました。

シンポジウムにはプロジェクトリーダーの吉田力雄(日本動画協会副理事長)をはじめ、次の5名が登壇。

・大徳哲雄氏(株式会社樹想社 代表取締役、立教大学文学部 文芸思想専修講師)
・木村智哉氏(明治学院大学 非常勤講師)
・檜山大悟(株式会社アーイメージ 取締役、日本動画協会データベース・アーカイブ委員)
・とちぎあきら氏(東京国立博物館フィルムセンター主任研究員 映画室長)
・千島守氏(株式会社トムス・エンタテインメント 広報部長)

まずは吉田から、業界各社の協力によって完成した「アニメNEXT_100」のキービジュアルが発表されました。このキービジュアルで一同に介したキャラクターの数は135にも及びます。戦前の作品から往年の名作、最近のヒット作まで、日本のアニメーション史を代表するキャラクターたちが集まりました。

■日本初の国産アニメーションをめぐる中間報告
「日本のアニメ大全」では、このキービジュアルのように、過去100年において制作されたアニメーション作品の情報を分類、系統立てて集約する作業を行っています。主な柱は3つ。アニメーション作品のデータベース構築、先人たちの証言を収録したオーラルヒストリー、国産作品の第1作目から現在までを網羅する新たな日本アニメーション史の作成です。

「こうしたアニメーション史の検証をするために欠かせないことがあります。それは、まず日本1作目となった商業アニメーションは何か? 誰によって作られ、いつ、どこで公開されたのか? そういった起源を明らかにする作業です」(吉田力雄プロジェクトリーダー)

そこで本プロジェクトでは、国産アニメーション1作目に関する調査を長期にわたって行っています。「近年まで日本アニメーション史の記述では、国産1作目の作品は、下川凹天の『芋川椋三玄関番の巻』だとされていました。これは作者である下川自身が後年、雑誌で語った証言が元になっていたのですが、最近の研究で、「『芋川椋三玄関番の巻」より早く公開された作品があるとの指摘がされています。

「そこで調査チームでは、初の国産アニメーションが公開された1917年前後の映画雑誌や新聞記事などを徹底的に調べました。すると、映画誌『活動写真雑誌』1917年3月号に、浅草のキネマ倶楽部という映画館で、この年の1月に『凸坊新画帖、芋助猪狩の巻』という作品が公開されたとの記述が見つかりました。そこには加えて、『欧米の所謂凸坊新画帖式のトリツク応用滑稽線画を研究して、我邦で最初の試みとして成功せるものか』とあります。つまり、欧米から輸入されたアニメーション制作の技法を使った初めての国産映画ではないかと書かれていたわけです。私たちは、これが下川凹天による最初の封切り作品ではないかと考えています」(大徳哲雄氏)

国産アニメーション1作目に関して、従来の定説とは異なる有力な情報が得られたことで、日本アニメーション史が刷新される可能性が高まってきました。さらに、下川と同時期にアニメーション制作に挑み、国産アニメーションの創始者とされてきた、風刺漫画家の幸内純一、画家の北山清太郎の最初の作品に関する情報も紹介されました。

「作品名や封切日に加え、本調査により、公開された映画館の立地も確定しました。北山の第1作とされる『猿蟹合戦』はオペラ館という映画館で同年5月20日。幸内の作品であり、フィルムが現存する最古の国産アニメーションである『なまくら刀』も、やはり同年の6月30日に帝国館で封切られています。これらの映画館はいずれも東京の浅草にあるのですが、浅草は当時から区画整理がほとんどされていないため、現在でもこうした映画館跡地をめぐることができます。

例えば、下川の作品を公開していたキネマ倶楽部は、浅草花やしきにほど近い立地の映画館であり、2012年に閉館した浅草中映劇場とほぼ同じ場所にあったことが確認できています。また、オペラ館と帝国館も、現在のつくばエクスプレス浅草駅に近い、六区ブロードウェイといわれる通り沿い、キネマ倶楽部のやや南に位置した映画館だったことがわかっています。現状は現地に行っても特に案内はありませんが、こうした情報が判明したことで、歴史的な背景を活用した観光地化なども可能になるのではないかと考えられます」(木村智哉氏)

■日本アニメーション映画クラシックスの紹介
続いて、東京国立博物館フィルムセンターのとちぎあきら氏からは、今年の2月22日から公開された「日本アニメーション映画クラシックス」の解説がありました。

「日本アニメーション映画クラシックス」とは、フィルムセンターが所蔵する戦前のアニメーション映画をネットで無料配信するプロジェクト。1917年から1941年まで、現在64本(サイレント60本、トーキー4本)を公開しています。

「サイト上では外国のユーザーも閲覧できるように、英語字幕付バージョンも公開しています。それらはジャンル別、年代別に分類をしており、たとえば、年代順に観ていくことで、戦前アニメーションの発展の様子を知ることができるようになっております。貴重な歴史的資料として、個人のアニメファンだけでなく、教育や研究目的でもぜひ利用していただきたい」(とちぎあきら氏)

※日本アニメーション映画クラシックスはこちら
http://animation.filmarchives.jp/index.html

■データベース構築とオーラルヒストリー
また、日本動画協会データベース・アーカイブ委員の檜山大悟からは、アニメーションのデータベース構築事業について説明がありました。

1917年から現在まで日本で制作されたアニメーション作品のうち、日本動画協会が確認できたものは、1万1918作品、話数は15万9463エピソード(2017年2月現在、シリーズ作品を含む)に及んでいます。データベース構築事業では、この豊富な国産アニメーションの歴史と文化をデータベース化するだけでなく、権利情報も集約することで、ビジネス利活用の推進、海外への情報発信などを円滑にしていくことを目的としています。

こうした情報はネット上のデータベースにアーカイブされ、作品名やクリエーターの個人名などから、自由に作品情報を検索することが可能になる予定とのこと。著名なクリエーターだけでなく、アニメ制作に関わるスタッフのクレジットもできる限り載せていくことで、個人のポートフォリオとして利用できることも期待されます。

シンポジウムの終盤には、トムス・エンタテインメントの千島守氏から「オーラルヒストリー」に関する紹介も行われました。作品情報の収集を主軸とするのがデータベース構築事業であるならば、個人の証言を収集するのがこちらのプロジェクトです。

「レジェンドたちの証言を100年後のアニメ業界に向けたメッセージとして記録していきたい。もし可能ならば、クリエーターだけでなく、裏方として制作経理をずっとされてきたような、業界の縁の下で頑張ってきた方々の証言も集めていきたいと思っています」(千島氏)

そして会場では、『巨人の星』など名作漫画を手掛け、アニメ業界にも多大な功績を残した川崎のぼる氏によるメッセージ動画を公開。「星一徹のちゃぶ台返しは原作では一回しか出ていないのに、今でもみなさんの記憶に残っているのは、アニメが広めてくれたおかげです」など、アニメ業界への思いが語られました。

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